Sunday, November 19, 2006

本多静六著池田光編『本多静六一日一話 人生成功のヒント366
本多静六氏のことは30年ほど前に渡辺昇一著「知的生活の方法」ではじめて知った。収入の4分の1を天引き貯金することで始める蓄財法を実践した大学教授だと。「知的生活の方法」で『恒産』の重要性を主張している箇所に登場したと記憶している。
2回目の出会いは、今年の春MOOK「マネーの王道」で。人気は変わらない。
そして3回目の出会いは先日Junku堂で。この本をみつけ座り読みをしていてツイツイ買ってしまった。
この方、天引き貯金だけでなく、「1日1頁原稿執筆」もやっていたそうで、著書が370冊を超えるそうだ。著書の中から名言を編者の池田氏が366個拾い集めたのがこの本。
1892年(明治25年)25歳~1952年(昭和27年)85歳で亡くなるまでに生み出された言葉の数々だ。幼少の頃に父親を亡くし、多額の借金返済で貧乏を経験したが、学問に興味を持ち、ついにドイツで林学を学び、日本で最初の林学博士になる。山林や株で蓄財し、退職の際は有り余る資産を地元公共団体に寄付したそうだ。退職後は人生学を学び、人生相談にも応じたとのこと。その時代でもグローバルで独特な感覚で人生を駆け抜けた方とお見受けする。
本に書かれたお話は、非常に現代に通用する。日本が産業社会へ突き進む時代を生きておられたので、「与えられた仕事をとことんやれ」みたいな雰囲気もあるが、そんな時代の風に流されているのでなく、「自分で考え自分で実行する」(p.103)など自立が前提である。また「努力」って言葉も多用されているが、肩に力が入った「努力」でなく、ついに楽しみになってしまってやらずにおけないって感覚のことを「努力」と言っておられるようだ。
話題は蓄財だけでなく多岐に渡る。「食欲、性欲、自由欲」なんて話も登場する。人付き合いも。寺田虎彦の随筆集を思い出させる多様さだが、それに比べれば1冊でまとまっているし、一つの話題毎に月日がふられているのが便利。
今回読んだ中で一番のお気に入りは4月5日の箇所にある「現在に感謝せよ」。「現在に進み得たことと、さらに日に新たなる努力を楽しみ得る境遇とに感謝する」との意味。ついつい忘れるよな、「感謝」。
手元においておき、折に触れて目を通す本だ。

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